介護は終わりではなく『旅』のはじまりだった

 病気が治ったら旅行にいこう!

 病に伏せた人をそのように励ました経験はありませんか?

 でも、不治の病だと判っていたらどうしましょうか。

 在宅介護は、生活の自由を奪うものではなく、むしろ人を成長させる“旅”になり得る。それが判ったとき、介護の景色が変わります。

もくじ

引きこもりがち

 親が認知症になってしまうとそれを隠すかのように振舞うご家庭も少なくありません。

 また、認知症に限りません。

 私の親友のお母様がパーキンソン病に罹患した当時のことです。

 在宅介護を頑張るその友人が、こう言っていました。

友人:『お母さんは、要介護2なんだけど、施設には行かないんだ。』

友人

お母さんは、要介護2なんだけど、施設には行かないんだよね・・・。

どうして?

友人

パーキンソン病で、他の人からそのようにしか見られないから。パーキンソン病患者、そう接してこられるのが嫌なんだよ。

そうなんだ・・・。そりゃそうだよね、差別的だもんね。

 実際にデイサービスのお世話になってみると良く判ります。

 認知症をはじめ、どのような病に罹っていても、そこはフツーに人間関係の巣窟です。

 『あの人は苦手。』

 『この人と一緒のテーブルはやめてください。』

 レクリエーションの時間では、元気な人同士だと、言い争いも生じます。

 介護する子から見れば、年老いた親御様を預かってくれる時間は貴重ですし、休めます。

 良い環境やご縁のある施設なら別ですが、親の立場からすれば、デイサービスに行くことすら『苦痛』に感じるのが本音です。

 ただ、それを『言わない』だけなのです。

 私の親友のお母様もそうですが、やがて家から出るのが億劫になっていきます。

旅に出るから成長する

 この世界では、活躍する人ほど移動します。

 活躍しない人が、バンバン移動するという現実はありません。

 逆に言えば、移動するから、成長します。

 なぜなら、旅は予想しない出来事の連続です。

 ひとつひとつの出来事やアクシデントに一喜一憂するのではなく、柔軟性の高まりと対処能力向上が跳ね上がります。

 よく『上手く行ったら』、『成功したら』、そんな言葉のあとに旅行にいくというフレーズが続くのを耳にします。

 しかし、逆なのです。

 旅に出る。だから、上手くいきますし、成功します。

 では、何歳まで旅行が可能でしょうか?

 答えは、亡くなるまで。

 今、思い返すと在宅介護をやらせてもらった実母とは、介護が始まって以来、生活そのものがずっと『旅』でした。

 例えば、住まう環境の変化。

 これも十二分に『旅』なのです。

帰る家を売る

 実母の在宅介護を担うにあたり、それまで実母が住んでいた家を売却しました。

 その時は、家を売却した、この事実しか認識できませんでした。

 でも、いま振り返れば、それが実母と私の旅立ちの合図。

 それは、いわゆる観光地に行くような旅とは異なります。

 人生そのものの変化、つまり『旅』なのです。

 住み慣れた地域を離れ、一緒に賃貸マンションに暮らし始めるのですが、そこで新たな生活が共同生活が始まります。

 その時の様子は、次の記事で触れています。

 実母にしてみれば、老いと病の現実に向き合いながら、子の助けを得て日々を明るく暮らしはじめます。

 私の家庭では、実際、認知症症状を表面化させない取組を完成させます。

 簡単に書いていますが、この取組は、日々のトライ&エラーの積み重ねがあってこそ。

 逆に言えば、日々、何がしかの出来事やアクシデントが発生するから、介護する私の柔軟性と対処能力が向上し、認知症症状を表面化させない取組を完成させます。

 つまり、ここには人生そのものの変化を『旅』をとらえたからこその『成長』があります。

 そして、実母が亡くなった後、その賃貸マンションを契約を解約し、私はまた別の地へと移り、新たな課題への取組が始まります。

 こうして振返ってみると、旅立つために手放していく。手放すから旅が始まる。

 その時は、人生の一コマにしか見えない現実も、俯瞰すれば、人生そのものが、『旅』だと判ります。

 認知症や病を抱えると、本人は外に出ることすら苦痛になり、家にこもりがちになります。在宅介護は介護者の負担が注目されやすいですが、介護される親御様もまた静かに負担を感じています。

 一方、日々は予定外の出来事への対処の連続であり、視点を変えると『旅』と同じ構造を持ちます。

 何かを手放し、環境を変えながら進むその過程で、柔軟性と対処力が育っていきます。

 それこそが『成長』であり、年老いた親御様の在宅介護は終わりではなく、人生を動かす『旅』そのものだと判る日が必ずきます。

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